
はじまり
廃屋で孤独に暮らす黒猫が洪水におそわれ、流れ着いた船に飛び乗ると、そこにはほかの動物たちも次々と加わってきた。仲間たちは小さな船で、見捨てられた世界をめぐる旅を続ける。
ミタメモ
セリフのない映画、ときくと、なんかわかりにくくて眠い映画だったらどうしよう? と心配しがち(私は)だけれど、この映画は猫ちゃんが走ったり滑ったり溺れたりする様子を「大丈夫?」と心配しながらひたすら見守ることで、退屈することなく、いやむしろたいへん楽しく最後までみられる。
それでも、とちゅう少しは、解釈が割れそうな不思議なシーンもある。そこはこのあとの「ネタバレ」の項に書きます。ネタバレすると困る場合はそこは読まないようにしましょう。ストーリーは太い一本線で観やすいものの、あとでいろいろと解釈を考えうる作品でもありそうです。
ネタバレ
私がちょっと考えこんだのは、あの鳥さんの解釈。猫ちゃんのことは好きそうだし、助けてくれたりもするけれど、途中で仲間と意見が対立したら助けるのをやめ、飛び去ってしまった鳥さん。猫ちゃんはそれを気にして追いかけたけど、プイッと別れて天の不思議空間へと去ってしまった……。
あの鳥さん、私には、この世の中のIT系億万長者みたいに思えてきました。頭がさえていて、気に入った相手には優しくもしてくれる。だけどその優しさは、誰にでも向けられるものではない。そして気に入らなくなったらそれまで大切にしていた相手も捨てて、プイッと自分だけが飛んで行ける天国へと去っていく。
残された者たち(私など)は、終わりゆく世界を漂う小舟の上で、気の合わない者たちとさえ助け合う道を選ぶしかない。そのなかで大切にし合える仲間を見つけることに希望を見出すことこそが、今を生き抜くために必要なことなのだ……というような。一度みただけで適当なこと書いてますけど。そんな気がしました。
むだメモ
見るからにコンピュータグラフィックスのアニメ映画なんだけれど、ふだんからディズニーとかピクサーとかのCGアニメ作品を見慣れていると、「なんでこの猫の毛、ふわふわにならないのかな? できないのかな?」「丸みの影が多面体みたいになっちゃってるのはいいのかな?」「どこの映画?」「あ。ラトビアなの。それじゃこの違和感は、ラトビア映画だからなの……?」などと戸惑ったりしそうな気がする。
だけどそれは、ラトビア映画だからというよりは、ブレンダーという基本無料のソフトを使ったアニメ作家の作品だから、ということで納得がいく。そして、ブレンダーのことをよく知らないながらも「すげえ!」と思う。小規模作品で使うことが一般的な無料ソフトを使ったアニメに、こんな情報量をこつこつ載せて、しかも美しくみせることができるのか、と。Wikipediaによれば、ストーリーボードも作らず捨てたシーンがひとつもない、とか。ほんとうにこつこつ映像を作ることで作品世界を探索しながら淡々と作って終わらせたのか、と。すごい。
なぜブレンダーのことをよく知らないのにすごいと思えるかというと、自分としては20年くらい前に、ネット上の短編を作るのが一般的だったアニメソフトFLASHで制作した劇場用長編アニメをみて「すげえ!」と思った感覚になぞらえている。あのときは自分でもFLASHを使っていたので、自分は初心者ながら、それを本気で使いこなすとどのくらいすごい作品ができるのかとか、それができる能力とかそれをやる手間ってどれだけスゴいかとか、なんとなくある程度、感得できていた。
ブレンダーはFLASHとは時代が違う、もっといろいろできる次世代のソフトだろうけれど、もしかしてその相似形のような感覚があるんじゃないかと、勝手に想像している。そういえばこの映画の良い評判を最初に聞いたのも、CGアニメ業界経験者からだったし。
だけど、そういう経験がたまたまない、しかも昔のCG映画(ピクサー初期作品とか、キャラクターがみんなツルツルしていたころ)をみた経験もない若い人などがみた場合にはどうなのかな、というのはちょっと気になる。猫の毛がふわふわしないだけでも、歯がゆく思ったりするだろうか? たとえ全体的には、かわいい動物や美しい色彩などが楽しめたとしても。
映画というものが機械の産物であるその最初から、斬新な技術による魅力も常にあれば、陳腐化の問題からも逃げられないし、アニメの場合はいつもその両方のせめぎあいの谷間みたいなところにメインストリームが存在するのだが、FLOWの立ち位置はそのなかでもユニークなのではと思うのだった。
どんだけ
1時間25分
どうみた
ストリーミングサービスHBO max